※この記事は実体験をもとに構成しています。登場人物のプライバシーに配慮し、氏名・属性・会話内容などの一部を変更しています。
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「大人」の約束と、揺れる境界線
「大人だと、どれくらいでしたっけ?」
なのかから届いたメッセージは、驚くほど率直だった。
最初の顔合わせで感じた人懐っこさが、そのまま文章のテンポにも表れている。
遠回しな探り合いを続けるより、お互いが望んでいることを最初に確認する。
彼女は、曖昧な期待を抱かせない女性だった。
二月の半ば。
私たちは、もう一度会う約束をした。
しかし当日が近づくにつれて、彼女の言葉にわずかな揺れが混じり始めた。
「間が空きすぎて、緊張する……」
「やっぱり、一旦ご飯だけにしませんか?」
そのメッセージを読んだとき、私は不思議と冷静だった。
どのような関係であっても、片方の気持ちが追いついていないまま先へ進むべきではない。
相手の迷いを押し切って得られるものなど、何もない。
「緊張するよね。大丈夫。まずはランチにしよう」
そう返し、待ち合わせ場所を街角の老舗洋食店に変更した。
当日、なのかはパフェをつつきながら、いつもの調子でよく笑った。
私たちは近況を話し、アプリで出会った人たちの話をして、最後まで何も決めないまま店を出た。
約束どおりに進まなかった一日。
けれど、失敗だったとは思わなかった。
急いで距離を縮めるより、立ち止まることを受け入れてもらえた経験のほうが、彼女にとっては意味があったのかもしれない。
この世界では、何かをしない時間にも価値がある。
私は、なのかと過ごした午後に、そのことを教えられた。
敗戦報告を聞いてくれた夜
三月。
私は別の女性と会う約束をしていた。
ところが、待ち合わせの時間になっても相手は現れなかった。
連絡もない。
人の波だけが目の前を通り過ぎていく。
深夜の繁華街で一人、冷たい風に吹かれながら、私は自分がひどく間抜けな存在に思えた。
その夜、話を聞いてくれたのが、なのかだった。
「ええええええ、ひどい!」
「連絡一本くらいしてくれたらいいのに」
彼女は、自分が被害に遭ったかのように憤ってくれた。
その反応がおかしくて、少し笑った。
アプリでは、昨日まで会話していた人が、何の前触れもなく消えることがある。
名前も知らないまま、二度と画面に現れない人もいる。
けれど、なのかは違った。
私の失敗を笑い、怒り、次の作戦まで一緒に考えてくれた。
いつしか彼女は、デートの相手というより、同じ戦場を生き抜く「戦友」のような存在になっていた。
彼女が韓国へ行くためにお金を貯めていることも、希望する条件があることも、私は聞いていた。
数字だけを見れば、そこには割り切った現実がある。
だからこそ、私は条件と好意を混同しないようにした。
どれだけ会話が弾んでも、それを恋愛感情だと決めつけない。
どれだけ親しくなっても、相手の同意を省略しない。
私たちは互いの希望を改めて確認し、夜の街にあるコンビニの前で合流した。
そしてその夜、約束していた時間を共にした。
男性には見えない、アプリの裏側
別れた後、なのかからLINEが届いた。
「あのさ、アプリって女性側から男性のクチコミが見られるんだよね」
彼女によれば、男性には見えない場所で、会った相手に関する情報を確認できることがあるという。
その話を聞き、私は少し怖くなった。
自分がどのように振る舞ったか。
約束を守ったか。
相手を不快にさせなかったか。
男性側からは見えなくても、行動の積み重ねはどこかに残っている。
アプリは、プロフィールだけで勝負が決まる世界ではなかった。
「ブッチされないコツ?」
「逆に、少し冷たくしてみたら?」
「いつも優しすぎるんだよ。なめられないように、絵文字とか減らしてみなよ(笑)」
なのかは、私のメッセージまで添削し始めた。
私は彼女のアドバイスを聞きながら、こんな関係もあるのだと思った。
恋人ではない。
ただの相談相手でもない。
条件から始まったはずなのに、いつの間にか互いの失敗を報告し、次の出会いを応援している。
彼女は韓国で買ったという服を、
「次に会ったら着て見せるね」
と、茶目っ気たっぷりに笑った。
私は私で、別の誰かとのやり取りを彼女に報告した。
奇妙だった。
それでも、その距離感が心地よかった。
しかし、戦友として続いていた日常にも、終わりはやってきた。
唐突ではあったが、不思議なほど静かな終わりだった。
連絡がないことが、うまくいっている証拠
四月。
しばらく連絡を取っていなかったなのかから、一通のメッセージが届いた。
「最近、うまくやってるみたいですね」
「連絡がないってことは、そういうことでしょ(笑)」
図星だった。
私は、定期的に会える人と出会っていた。
新しい相手を探す必要がなくなり、アプリを開く回数も減っていた。
なのかは、何も説明していないのに気づいていた。
この世界では、連絡が途絶えることが必ずしも悪い知らせとは限らない。
探し続けなくてもよい相手と出会えたから、報告する失敗も、新しい作戦もなくなった。
沈黙は、ようやく手に入れた平穏の証拠でもあった。
私は、定期的に会える人が見つかったことを伝えた。
そして、アプリをやめようと思っていることも。
彼女からの返事は、すぐに届いた。
「よかった! 自分のことのようにうれしい」
「うまく続きますように。本当にお元気で!」
引き止める言葉はなかった。
次に会う約束を確認することも、韓国で買った服の話を持ち出すこともなかった。
ただ、同じ荒波をくぐり抜けた者同士にしか分からない、清々しい祝福だけが残った。
アプリを削除する前に
連絡先を整理し、スマートフォンの画面に並んだアプリのアイコンを長押しする。
削除を選べば、数秒で消える。
けれど、本当の意味でアプリを終わらせることは、それほど簡単ではなかった。
画面の向こうには、うまくいかなかった約束がある。
傷つけられた夜がある。
自分が誰かを傷つけた可能性もある。
そして、恋人にはならなかったけれど、確かに心を通わせた人がいる。
なのかとの関係も、その一つだった。
条件を確認するところから始まり、迷いが生まれた日は立ち止まり、失敗した夜には慰め合った。
恋愛という言葉だけでは説明できない。
友情と呼ぶには、少し複雑すぎる。
それでも彼女は、絶望と熱狂が入り混じるアプリの世界で、最後まで体温のある言葉をくれた人だった。
私は彼女の幸せを願いながら、最後のメッセージを送った。
「ありがとう。なのかも元気でね」
送信済みの表示を確認し、画面を閉じる。
それから、アプリを削除した。
卒業とは、誰かに勝つことではない。
もう探さなくてよい場所へたどり着き、そこで出会った人に、きちんと別れを告げることなのだと思う。
これで本当に、卒業だ。
この体験で利用したアプリ
「なのか」と知り合ったのは、paters(ペイターズ)だった。
patersでは実際に何人もの素敵な女性と会うことができた。
もちろん、登録すれば必ず会えるわけではない。
相手の見極め方や、実際に使って感じた良かった点、料金、注意点については、以下の記事で詳しく紹介している。
ほかのサービスとの違いを知りたい人は、5社を実際に使った比較記事も参考にしてほしい。

