積み上げた時間の崩壊――れなと、返事のなかった夜

波に削られ、崩れ始めた夕暮れの砂の城

※本記事は実体験をもとに構成しています。登場人物のプライバシーに配慮し、氏名・属性・会話内容・時系列などの一部を変更しています。

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目次

合わない日程を、何度もつなぎ直す

「すみません。急にバイトが入ってしまって……」

れなとの出会いは、予定変更を知らせる一文から始まった。

彼女は成人した大学4年生だった。

卒業後の進路はすでに決まり、接客を伴う華やかな仕事へ進む予定だという。

以前にも接客業で働いた経験があり、お酒も好きだった。

話していると明るく、会話にも慣れている。

一方で、家族から仕事について心配されたこともあり、今は落ち着いて話せる相手との出会いを探していると話していた。

週末にはアルバイトがあり、平日は大学へ通う。

そんな彼女の予定と、会社員である私の仕事は、面白いほどかみ合わなかった。

最初の約束は、急なアルバイトで延期になった。

次は、体調不良だった。

普通なら、

「今回は縁がなかったのかもしれない」

と考えてもおかしくない。

それでも彼女は、予定が流れるたびに言った。

「本当にすみません。また調整させてください!」

その言葉があるから、私は完全に諦めることができなかった。

約束を断るだけなら簡単だ。

それでも次の日程を探そうとしてくれるのだから、根は真面目な人なのだろう。

私は彼女の事情を理解しようとしながら、カレンダーを何度も開き直した。


四度目の提案で、ようやく会えた

彼女と初めて会えたのは、四度目の日程調整が実った土曜日の夜だった。

待ち合わせ場所は、駅近くのカフェ。

彼女が確保できた時間は、30分ほどしかなかった。

それでも、画面の中にしかいなかった人が目の前に現れた瞬間、それまでの日程調整に対する疲れは薄れていった。

実際に会った彼女は、写真で見ていた以上に好印象だった。

明るく、よく笑い、こちらの話にも自然に反応してくれる。

短い時間ではあったが、会話が途切れて困ることもなかった。

帰り際、私は次の約束について尋ねた。

「今度は、もう少しゆっくり食事に行きませんか。お酒も飲みながら」

彼女は笑顔で答えた。

「よかったです。うれしい。ぜひ行きたいです!」

少なくとも、その瞬間の気持ちは同じ方向を向いていた。

そう思えるだけの温度が、彼女の言葉にはあった。


期待という名のコスト

二度目に会う場所として、私は落ち着いて話せる創作料理の店をいくつか提案した。

彼女が選んだのは、街の中心から少し離れた、隠れ家のような和食店だった。

派手すぎず、静かすぎない。

お酒を飲みながら話すには、ちょうどよさそうな店だった。

最初に決めた日程は、7月1日。

しかし、また彼女から連絡が来た。

「申し訳ないんですが、2日に変更してもらうことはできますか?」

一瞬、これまでの日程変更が頭をよぎった。

それでも、今回はすでに一度会っている。

会ったときの彼女の印象もよかった。

私は疑うより、もう一度合わせることを選んだ。

「大丈夫です。2日の19時30分で予約しておきますね」

店を探す。

空席を確認する。

仕事の予定を調整する。

前日に確認の連絡を入れる。

一つひとつは小さな作業だった。

けれど、それが何度も繰り返されると、少しずつ時間と気持ちが積み上がっていく。

マッチングアプリにおける誠実さとは、返信の丁寧さだけではない。

相手と会うために、自分の時間を少しずつ差し出していくことでもある。

前日、彼女からメッセージが届いた。

「明日、楽しみです」

「こちらこそ、よろしくお願いします!」

私はその言葉を信じた。


無言の19時37分

7月2日。

当日は仕事が立て込んでいた。

それでも約束の時間に遅れないよう、目の前の仕事を急いで片づけた。

定時を迎えると、私はすぐに職場を出た。

「仕事が終わったので、向かっています!」

夕暮れの街を、足早に歩いた。

店の前へ到着したのは、約束の4分前だった。

「お店の前に着きました。今、向かっていますか?」

返信はない。

既読もつかない。

仕事が長引いているのかもしれない。

移動中で、スマートフォンを見られないのかもしれない。

私は店の入り口が見える場所に立ち、通りを歩く人の中から彼女を探した。

19時30分。

予約の時間になった。

それでも彼女は現れなかった。

店内から、楽しそうな話し声が聞こえてくる。

これから二人で座るはずだった席が、店の中に用意されている。

そう考えるほど、店へ入ることも、その場を離れることも難しくなった。

私は何度もスマートフォンを確認した。

通信状態に問題があるのではないか。

通知が遅れているだけではないか。

理由を探すたび、画面には何も表示されていないという事実だけが残った。

19時37分。

私は最後のメッセージを送った。

「今日は、もう難しそうですね」

怒りをぶつける言葉は書かなかった。

何が起きたのか分からない以上、責めることもできなかった。

ただ、これ以上そこで待ち続けることもできなかった。


崩れたのは、当日の約束だけではなかった

彼女が現れなかったことで失われたのは、その夜の食事だけではなかった。

最初の予定変更。

次の体調不良。

何度も開いたカレンダー。

四度目の提案で、ようやく会えた30分。

次はゆっくり食事をしようと話した時間。

店を探し、予約を入れ、仕事を調整したこと。

それらすべてが、一つの約束につながっていると思っていた。

だから、その約束が無言のまま消えたとき、これまで積み上げてきた時間まで否定されたように感じた。

なぜ彼女は現れなかったのか。

仕事で何か起きたのか。

体調を崩したのか。

会う直前になって、気持ちが変わったのか。

本当の理由は分からない。

連絡のない相手の事情を、こちらの想像だけで決めつけることはできない。

彼女が意図的に私を困らせようとしたとも断定できない。

確かなのは、約束の時間になっても彼女が現れず、私のメッセージにも返事がなかったということだけだ。


誠実さにも、境界線がいる

私はこれまで、相手の事情を受け入れることが誠実さだと思っていた。

忙しいなら、別の日を探す。

体調が悪いなら、回復するまで待つ。

予定が変わったなら、こちらも調整する。

それ自体が間違っていたとは思わない。

相手にも仕事や生活があり、突然予定を変えなければならないことはある。

しかし、相手に合わせ続けることだけが誠実さではない。

自分の時間を守ることも必要だった。

何度も日程変更が続く場合は、次の約束を急がない。

予約を入れる前に、もう一度意思を確認する。

当日の確認に返事がなければ、店へ向かうかどうかを判断する期限を決めておく。

返信がない相手を、いつまでも追いかけない。

これは相手を疑うためではない。

一つの約束に、自分の時間と期待を注ぎ込みすぎないためだ。

約束を守ろうとする誠実さと、返事のない約束から自分を引き戻す決断は、両立できる。

私は、れなとの夜を通じてそれを知った。


砂の城だったとしても

マッチングアプリで生まれた関係には、まだ名前がない。

恋人でもない。

友人とも言い切れない。

画面上の言葉と、わずかな時間だけでつながっている。

だからこそ、何度も予定を合わせ、実際に一度会えたという事実を、私は必要以上に特別なものだと思っていたのかもしれない。

積み重ねた時間があるから、次も大丈夫だと思った。

一度会えているから、もう突然消えることはないと思った。

しかし、過去に交わした言葉は、次の約束を保証してくれない。

どれほど丁寧に積み上げたつもりでも、まだ固まっていない関係は、波が一度寄せるだけで形を失うことがある。

あの夜、店の前に残されたのは私だけだった。

けれど、無駄になったのは時間のすべてではない。

相手へ誠実であること。

同時に、自分の時間にも誠実であること。

その二つの間に境界線を引く必要があると、私は学んだ。

私はスマートフォンをポケットへしまい、予約席のない夜へ歩き出した。

もう返事を待たないと決めて。


この体験で利用したマッチングアプリ

このとき利用していたのは、18歳以上を対象としたマッチングサービス「paters」だった。

今回の出来事は、patersというサービス全体について評価するものではない。

実際に私はpatersを通じて複数の女性と会っている一方、途中で連絡がなくなったり、約束が実現しなかったりしたこともある。

どのマッチングサービスでも、登録すれば必ず相手と会えるわけではない。

料金、利用条件、安全対策、自動更新の仕組みなどを確認したうえで、自分の目的に合うかを判断してほしい。

patersを実際に使った感想や料金、利用時の注意点は、以下のレビュー記事で詳しく紹介しています。

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※patersは18歳未満の方は利用できません。登録によって出会いや交際が保証されるものではありません。料金やサービス内容は変更される可能性があるため、最新情報は公式サイトをご確認ください。

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この記事を書いた人

「余白の恋」著者。
40代でマッチングアプリという未知の世界へ。実体験をもとに、大人の恋愛と出会い、そして自分を整えることについて綴っています。焦らず、執着せず、それでも少しだけ心が動く。そんな恋の余白を記録します。

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